nuno no tabi|02 白 — 時間がつくる静かな白

zen no ma|nuno no tabi

白には、いくつもの表情があります。

強く光る白。
冷たい白。
ただ明るいだけの白。

そして、もうひとつ──
時間がつくる、静かな白。

zen no ma が選んだ和晒しの布は、
薬や熱で無理に“真っ白”にするのではなく、
水と蒸気だけで、ゆっくり整えられます。

数日間、釜の中で眠るように。
急がず、焦らず。

綿が抱えていた余分なものがほどけ、
糸一本一本が、呼吸を取り戻していく。

その時間は、仕上げではありません。
布が、布に還っていく時間。

清めるのではなく、
本来の姿へ、そっと戻していく感覚。

こうして整えられた和晒しは、
光をやわらかく受けとめ、
触れた瞬間、心の速度を落としてくれます。

使う人の暮らしの中で、
すこしずつ柔らかく育ち、
洗うたびに、また軽くなる。

その変化は、劣化ではなく、育ち。
使い込むほどに深まる、時間の表情。

私たちが求めた白は、
完璧でも、均一でもなく、
どこか余白のある白。

呼吸のある白です。

そして、ここでひとつ。

この和晒しは、
偶然ここに辿り着いた布ではありません。

百年以上、
織ることだけを続けてきた場所があります。

時代が変わり、
布が速さや効率を求められる中でも、
そこでは、糸と向き合う時間だけが
途切れることなく重ねられてきました。

そこで生まれた和晒しは、
昔のままでも、新しいものでもありません。

水と蒸気。
布が耐えられる速度。
綿がもっとも安らぐ時間。

何度も確かめながら、
和晒しという技法そのものを、
静かに深めてきた布。

白くするためではなく、
布が布に還るために。

いま私たちが手にしているのは、
「和晒し」という言葉だけでは、
もう収まりきらない布です。

清らかさより、深さ。
均一さより、余白。

使うほどに、
その人の時間を映しはじめる布。

zen no ma が選んだのは、
新しさではなく、
続いてきた時間が、これからも続いていく布でした。

次は、なぜゆっくりと織られる布を選んだのか。
その理由を綴ります。

zen no ma

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